#恋する海外文学

ゆとり会社員がお届けする海外文学・ビジネス書・洋書の感想ブログ。 Literary Classics and Murder-mystery Book Review from Japan ;)

エラリー・クイーン『Xの悲劇』

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★本の情報

エラリー・クイーン『Xの悲劇』

・訳:鮎川信夫

・出版:創元推理文庫

 

★あらすじ

ニューヨークの電車の中で起きた奇怪な殺人事件。おそるべきニコチン毒をぬったコルク玉という新手の凶器が使われたのだ。この密室犯罪の容疑者は大勢いるが、聾者の探偵、かつての名優ドルリー・レーンの捜査は、着々とあざやかに進められる。“読者よ、すべての手がかりは与えられた。犯人は誰か?”と有名な挑戦をする、本格中の本格。

 

★感想

エラリー・クイーンの本はそれほど多くを読んだことがなく、またこの「~の悲劇」シリーズも今回が初めてなのですが、クイーンの小説の面白さは、真相を自分で解き明かせそうでできないところにあると思います。

 

読者に対して誠実、というか。

 

大好きなクリスティーをどうこう言うつもりはないのですが(世界で一番好きな作家であることは変わりません◎)、彼女の作品はちらほら、「えっそうだったの!?」と最後にびっくりすることも多いのですが、クイーンは全て読者に提示しているんですよね。だからこそ最後はいつも納得するし、悔しくなる。

 

今回の『Xの悲劇』もまさにそうでした。被害者が亡くなる場面は丁寧と言っていいほどしっかりと描かれているし、ドルリー・レーンが犯人を絞った決定的な理由も納得しました。ただ少し動機と犯人のつながりが見えにくかったかな。ミステリーのプロ読者の方なら簡単なのでしょうか?^^

 

タイトルに「悲劇」と付いている理由が最後に少しだけわかった気がします。次は『Yの悲劇』が手元にあるので、読むのが楽しみです◎

 

 

 

アガサ・クリスティー『鏡は横にひび割れて』

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★本の情報

アガサ・クリスティー『鏡は横にひび割れて』

・訳:橋本福夫

・出版:早川書房

 

★あらすじ

穏やかなセント・メアリ・ミードの村にも、都会化の波が押し寄せてきた。新興住宅が作られ、新しい住人がやってくる。まもなくアメリカの女優がいわくつきの家に引っ越してきた。彼女の家で盛大なパーティが開かれるが、その最中、招待客が変死を遂げた。呪われた事件に永遠不滅の老婦人探偵ミス・マープルが挑む。

 

★感想

大好きな『毒入りチョコレート事件』の犯罪研究会のメンバーにぜひ推理してほしい事件だった。というのも、もちろん最後に犯人は明かされるのだが、それまでの過程でいろいろなパターンが考えられ、推理する楽しさがあるからだ。

 

伏線はいろいろなところに張り巡らされており、どれとどれが繋がるのか、誰が何を考えているのか、それを一つ一つ考えていくのが面白い。

 

他の人のことなんて、きっと何もわからない。「○○さんは××なのよ」「○○さんは△△な人だから」、こう形容されやすい人ほど、その本当の姿や心の奥底にある思いは誰にも気づかれないのだと思う。

 

もう一つこの本を読んで思ったのは、優しさと思いやりは似ているようで違うということ。優しいというのは時に自分本位なところがある。「○○さんのために」というのが、実はその○○さんにとってはお節介なことだったり、ひどいときは触れてほしくなかったことだったりする。思いやりは、そこまで考えて、すべてひっくるめた上での言動なのだと思う。

 

今のは少しネタバレかな。そうならないといいのですが…。

派手さは少ないものの、いろいろなことを考えさせられる、味のある素敵な一冊でした。

 

 

アレクサンドル・デュマ『モンテ・クリスト伯』

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岩波文庫の『モンテ・クリスト伯』全七巻、読み終わりました^^

せっかくなので、まとめての感想を書きたいと思います!

 

*全七巻、壮大な復讐劇*

読み始めは、全部で7巻という長さに驚きましたが、主人公(エドモン・ダンテス=モンテ・クリスト伯)の目的は復讐することであり、そのシンプルな軸を保ったまま物語が進むので、不思議と長さは感じず、読みやすかったです。

 

モンテ・クリスト伯という人物*

ダンテスがモンテ・クリスト伯になった瞬間から物語の終わりまで、彼は非常に意志を強く持ったなあと思いました。物語後半で出てくる「大きな苦しみを味わった者だけが、大きな楽しみを得ることができる」(?)という表現が彼という人物をよく表しているのだと感じました。

じっと時機を見計らい、その時がきたら大胆に行動する、ここぞという時に人を陥れる能力は、まるで週刊誌みたいだなと……(笑)

 

*特に印象に残った場面*

全7巻を通して、私が印象にのこった場面は以下の3つです。

①牢獄で出会ったファリア司祭との別れのシーン

▶この司祭との出会い、交わした言葉がモンテ・クリスト伯という人物を作ったのだと思います。

 

②アルベール(フェルナンとメルセデスの子ども)との決闘のシーン

▶アルベールは勇気ある決断をしたのだと思います。受け入れがたかった父の恥ずかしい過去、それを明らかにした敵とも言えるモンテ・クリスト伯との結党。しかしその伯爵の行動の真意を理解したとき、彼は決闘の場面であのような決断をしたのでしょう。

 

メルセデスやマクシミリヤンとの会話のシーン

▶この二人だけが、伯爵が心を開いて本心で話せた人物なのではないでしょうか。普段は冷静な伯爵ですが、感情をむき出しにしたとき、彼の本心が見えた気がします。

 

*人をよく見る、よく知る*

伯爵のとった復讐の方法は実に様々でした。カドルッス、フェルナン、ヴィルフォール、そしてダングラール。伯爵ならば彼ら本人を殺してしまうこともできたのだと思いますが、そうではなく、その人にとって何が一番堪えるか(=その人にとって一番大切なものは何か)をよく見てよく知っていたのだと思います。

その人のことをよく知るというのは、苦しみも伴うのだと思います。例えばフェルナンの場合、メルセデスが結婚したという伯爵にとっては非常につらい現実を直視しなければなりませんでした。ですがその苦しみを乗り越えたからこそ、一番良い方法で彼に復讐できたのだと思います。

復讐されないように生きたいものです。一度虐げられた者の恨みは、長く続くのだから。