#恋する海外文学

ゆとり会社員がお届けする海外文学・ビジネス書・洋書の感想ブログ。 Literary Classics and Murder-mystery Book Review from Japan ;)

アガサ・クリスティー『牧師館の殺人』

 

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★本の情報

アガサ・クリスティー『牧師館の殺人』

・訳:羽田詩津子

・出版:早川書房

 

★あらすじ

閑静な小村セント・メアリ・ミード村で殺人事件が発生。しかも場所はこともあろうに牧師館の書斎―頑固な村の退役大佐が、射殺死体で発見されたのだ。やがて犯人と目される画家が自首したことから、事件は簡単に解決すると思われたが…せんさく好きの老嬢ミス・マープルが深い洞察力で真相に迫る長篇初登場作。

 

★感想

ミス・マープルの初登場となったこの『牧師館の殺人』。彼女が出てくる作品は何冊か読んだのですが、今作は彼女の良さ、エッセンスが詰まった素敵な作品だなあと思いました。

 

私が憧れに憧れるイギリスの古き良き小さな村のイメージにぴったり合うのが、マープルが暮らしこの本の舞台ともなる”セント・メアリ・ミード村”です。普段は穏やかな村ですが、殺人というセンセーショナルな事件が起きてしまいます。ポアロが登場する小説のような派手な舞台ではないものの、人間の奥深さや怖さを教えてくれるという意味では、マープルの作品も負けず劣らずとても魅力的です。

 

今作に話を戻すと、静かなセント・メアリ・ミード村の人々の中心的な場所である牧師館で殺人は起こります。被害者は老大佐。”被害者にぴったり”という言い方は失礼かもしれませんが、正直この大佐は推理小説の典型的な被害者と言えると思います。読み終えて気が付いたのですが物語の中で彼の人となりが語られる機会が少なくて、それも彼に人望がなかったことの一つの証拠でもあるのかなあと。

 

この本の私的お楽しみポイントを考えてみると、”場所と時間”かなあと思います。

 

まず場所については、クリスティー作品には現場やその周辺の図面や地図が載っていることも多いですが、この作品は1つだけでなくいくつか載っていて自分の想像力を補強してくれます。コテージ、アトリエ、牧師館、オールドホールなど色々な場所が出てきて少しわかりづらいのですが、地図があることで位置関係が整理しやすいです。そして何より地図があると登場人物が立体的に浮かび上がってきますよね◎

 

時間については、地図とあわせるともっと楽しめますよね。今回の事件は時刻が限られており、かつ少し細かいので事件全体を考えるうえで大きなヒントになります。

 

この作品はクリスティー好きの方/そうでない方にかかわらず好き嫌いが分かれてしまうかなあと思いました。奇抜なトリックはありませんし(それが今作の良さでもあるけれど)、犯人もわかる人にはわかってしまうかもしれません。でも、私はとても素敵な作品だなあと思いました。動機も犯行も奇抜でないからこそ、単なる無関係なエンターテインメント 、で終わらない怖さがあると思うのです。