#恋する海外文学

ゆとり会社員がお届けする海外文学・ビジネス書・洋書の感想ブログ。 Literary Classics and Murder-mystery Book Review from Japan ;)

アントニオ・タブッキ『遠い水平線』

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★本の情報

アントニオ・タブッキ『遠い水平線』

・訳:須賀敦子

・出版:白水社

 

★内容紹介(Amazonより)

ある夜運びこまれた身元不明の男の他殺死体。死体置場の番人スピーノは、不思議な思いにかられて男の正体の探索を始める。断片的にたどられる男の生の軌跡、港町の街角に見え隠れする水平線――。遊戯性と深遠な哲学性が同居する、『インド夜想曲』の作者タブッキの小説宇宙の真髄。

 

★感想

本自体にあらすじも、まえがきも、登場人物の一覧もない。私の無知とも相まって、舞台がイタリアだということも初めは気が付きませんでした。

 

「透明なものがたりだった。」もし私が感想を、と言われたらこう答えただろうと思います。するりとしていて、掴みどころがない。自分の身体を通り抜けていくような印象をずっと受けていました。

 

作者アントニオ・タブッキの書いたあとがき?注釈?で「瞳の中に水平線を持っている」みたいな表現(曖昧ですみません)があったのですが、とても素敵だなあと思いました。作者のほかの作品を読んだことがないので(短編が多いそうですね。)よく分かりませんが、ロマンチックなことを静かに表現することに長けているのではないかと感じます。まるで小さな宝石箱のよう。難しいことだし、努力で到達できる場所ではないと知りながらも、いつか私も彼のような言葉をつむいでみたい。

 

先ほどイタリアが舞台とは気がつかなかったと言ったそばから言うのも変なのですが、”イタリア”という国にふっと興味がわいてきました。太陽のように明るい国、すばらしいお食事の文化を持つ国、芸術の国……。そんなふわりとしたイメージしか持っていないことに気づき、イタリアって知っているようで全然知らないなと。そんなことを考えていたとき、最後にスピーノが感じたことに近いのかもなんて思ってしまいました。ただ、それさえも確かなことなんて言えない。