#恋する海外文学

ゆとり会社員がお届けする海外文学・ビジネス書・洋書の感想ブログ。 Literary Classics and Murder-mystery Book Review from Japan ;)

【読了】T.シュヴァリエ『林檎の木から、遠くはなれて』

**この記事はネタバレを含みますので、ご注意ください**

すごい本に出会ってしまいました。
この著者の本は、以前に『真珠の耳飾りの少女』を読んだことがあるのですが、同じ人が書いたとは。

真珠の耳飾りの少女』も、この本も、静かではあるんですが、何かが違う。
乱暴に抱いた。サディはそれを気に入ったみたいだった」というようなちょっと私が苦手な表現はあったのですが。
どことなく、スタインベックの『怒りの葡萄』に似ているような気も(家族が出てくるし、アメリカだから?)。

タイトルの、林檎の木、は何を意味するんだろう。読んでいるあいだ、そんなことをずっと考えていました。
ジェームズの視点なのだろうか。家族だろうか。ブラックスワンプの生活だろうか。

ジェイムズが嫌い、サディはもっと嫌い。サディからしか聞かなかったけれど、チャールズだって嫌いだ。
でもここで誰かを責められるだろうか。
誰もが自分は正しいと思い、誰もが間違っている。
誰が正義なんだろう。いやいや、そもそもここに正義なんてあるのだろうか。
人はどこまで自分を信じられるのだろうか。自分を信じ、間違ったことはしないと決めている人も、極限状態ではどうだろうか。

マーサとロバートが、この物語の救いなのだろうか。
でも、ロバートはマーサに対する自分の行動を後悔していなかった?

とにかく色んなことを自問自答しながら。

良い/悪い、は分かりませんが、少なくとも私にとって印象に残る本は、
こうやってたくさんの「?」が出てくる本なんです。
(日本の作家さんだと、東野圭吾さんの『ブルータスの心臓』など)
何度も読み返したい本とはちょこっと違う。

そして同じ本を読んだ人と、この「?」や感想を話し合うのが好き。
同じ本を読んでいるはずなのに、これほど違う考えをするんだということがわかるから。

この本は、起こることのインパクトが強くてそれだけでも大変なのですが、
もう一つ大きなものは、著者の木や自然への真摯に向き合う姿勢だと思います。
林檎の種類とか、プラントハンターとか、慣れない単語にはじめはついていくのでいっぱいですが、
描写が非常に緻密です。

読むのにエネルギーが要りますが(表紙がとってもさわやかなので、内容にびっくりしました)、
ぜひ興味のある方は読んでみてください^^