#恋する海外文学

ゆとり会社員がお届けする海外文学・ビジネス書・洋書の感想ブログ。 Literary Classics and Murder-mystery Book Review from Japan ;)

ポール・オースター『ミスター・ヴァーティゴ』

楽しかった日々を忘れるなよ―

 

 

「著者その人が1つのジャンルといえる人はだれか?」と問われたら、私は迷わずポール・オースターの名前を挙げると思います。

 

非現実的なストーリー、が根底にあるのかと思いきや、『ムーンパレス』では人類の月面着陸が、そして本作『ミスター・ヴァーティゴ』ではKKK世界恐慌が。彼がおとぎ話、だけを書きたいのであれば書かなくてもいいようなことを最も適切な場面で書き落とす。そんなわけで私は彼の生み出す独特の世界観のとりこになり、本作も2日ほどで読んでしまいました。

 

この小説は、語り手である主人公ウォルトの言葉をとおして彼の数奇な人生が描かれています。初めに人生を受け入れてから、さあやるぞとなったところで悲しみが、それを乗り越えて波に乗ったかと思えは救いようのない絶望が。

物語の後半ではまた新たな人物の登場とそれによって引き起こされる一つの挫折。そして最後は・・・

 

 

こうしてジェットコースターのように(しかしあくまで静かに)お話が進んでいくのですが、私はこの本を読んで、「人生を歩む」ことを改めて考えました。

もちろんウォルトが経験したほどの出来事はないかもしれない。でも人生が上がり下がりの連続であることはなんとなく実感してきている。もしかしたら、ほかの人もそうかもしれない。

 

生きていれば良いことも悪いこともある。良い人にも悪い人にも出会う。それは万人に共通で、そのことをオースターは上から目線で諭すのではなく、淡々とした事実のように小説の中に残すことによって、そっと教えてくれているのかもしれません。

 

 

 

ミスター・ヴァーティゴ (新潮文庫)

ミスター・ヴァーティゴ (新潮文庫)