#恋する海外文学

ゆとり会社員がお届けする海外文学・ビジネス書・洋書の感想ブログ。 Literary Classics and Murder-mystery Book Review from Japan ;)

ソルジェニーツィン『イワン・デニーソヴィチの一日』

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★本の情報

ソルジェニーツィンイワン・デニーソヴィチの一日

訳:木村浩

出版:新潮文庫

 

★あらすじ

1962年の暮、全世界は驚きと感動で、この小説に目をみはった。当時作者は中学校の田舎教師であったが、その文学的完成度はもちろん、ソ連社会の現実をも深く認識させるものであったからである。スターリン暗黒時代の悲惨きわまる強制収容所の一日を初めてリアルに、しかも時には温もりをこめて描き、酷寒(マローズ)に閉ざされていたソヴェト文学界にロシア文学の伝統をよみがえらせた芸術作品。

 

★感想

 

私はあまり、ロシア文学を読まない。

 

理由は……登場人物の名前だろうか。否。

だってラテンアメリカ文学の方が難しいと感じたから。

 

その理由は恐らく、見てはいけないものを見ている気分になるから、だろう。

 

この『イワン・デニーソヴィチの一日』はどうだっただろうか。描かれる時代やテーマは決して明るいものではない。ソヴィエト社会の収容所の一日。本書を手に取ったとき、少し図書館で借りたのを後悔したくらいだ。

 

「今、私はこんな暗い本を読める心の状態じゃない」と。

 

でも一ページ目をめくってみて、良かったと思う。

タイトルの通り、小説は朝起床するところから始まる。私と同じ一日、とはさすがに言えないものの、それでも多くの場面で囚人たちによって交わされる会話からは人間らしさがうかがえた。(看守?との対比もこれまた面白かった。)

 

彼らは、生きているのだ。

私たちと、同じように。

 

解説によれば、作者ソルジェニーツィンも厳しい時代を生きたという。彼は、自身の経験を記すのは簡単なことだ、といった趣旨の言葉を残したといわれているけれど、私はこれは一番勇気のいることでもあると思う。何か言いたいこと/書きたいことがあっても、それをしない/できない人がいつの時代でも、どこに生まれてもたくさんいる。

 

今、私が生きている世界だって、今語られないことがたくさん起きているのだと思う。それが何かの形で世に出たとき、私はもう生きていないかもしれない。のちにそれが大きな出来事だったとわかったとしても。当時はそんな歴史の一部を見ていた、経験していたなんてつゆ知らずに。