#恋する海外文学

ゆとり会社員がお届けする海外文学・ビジネス書・洋書の感想ブログ。 Literary Classics and Murder-mystery Book Review from Japan ;)

プレヴォ『マノン・レスコー』

 

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★本の情報

・プレヴォマノン・レスコー

・訳:野崎歓

・出版:光文社古典新訳文庫

 

★あらすじ

将来を嘱望された良家の子弟デ・グリュは、街で出会った美少女マノンに心奪われ、駆け落ちを決意する。夫婦同然の新たな生活は愛に満ちていたが、マノンが他の男と通じていると知り…引き離されるたびに愛を確かめあいながらも、破滅の道を歩んでしまう二人を描いた不滅の恋愛悲劇。

 

★感想

*『椿姫』の大ファンが読む『マノン・レスコー』*

私はデュマ・フィスの『椿姫』が大好きで、自分のバイブルと言っても過言ではないのですが、その『椿姫』の中でアルマンがマルグリットに送った本として登場する本作を読んでみました。

物語の構造や語り口等、似ている部分も多く、フランスロマン主義の雰囲気にどっぷり浸かることができました。

この『マノン・レスコー』は『椿姫』に比べて展開がとても早く、お金の使い方、工面の仕方ももっと派手だなあと感じました。詐欺や賭博(しかもここでもズルをしている)って、椿姫には中々見られないこともたくさんありました。ただ、助けてくれる人をどこまでも頼りにしてしまうのは『椿姫』の二人も同じで、困窮した者ならだれでも陥ってしまうのかもしれません。

もしグリュとアルマンが出会っていたら、お互い何と言うのでしょうね。もしかしたら自分に近い状況の人と知り合いになることで、自分のことをもう少し冷静に見れたりするんじゃないかなあ、なんてこっそり思っています。 

 

*マノンは罪深いか*

女性の私は「もうマノン何やってるのさ!」とあきれる部分も多かったのですが(笑)、男性はこれまた違うのでしょうね。マノンが他の男性と通じるのをやめないことや、贅沢が好きなことが結構フォーカスされて「マノン=悪」のような構造にもなりかねないのですが、私は悪いのはマノンばかりではないかなと思います。というのも、お金を彼女の好きなようにさせてしまったり、一度決めたことを彼女に少し反対されたからと言ってすぐに変えてしまうグリュも、同じくらい罪深いと思うからです。

この小説はグリュの語りとして進むので、どうしても彼の主観(「僕はこれほど~したのに」、「このあと待ち受ける悲劇が僕にわかったでしょうか?」等)が入っていて、読者は彼に同情してしまいそうになりますが、やっぱりここは少し冷静になりたいところ。彼の周りには、マノンの周りにいるよりもっと多くの助けてくれる人がいたはずなのに、ほとんどそれを無駄にしています。「恋」を言い訳に。

 

*ティペルジュは物語全体の救い*

グリュの友人ティペルジュは、もうなんていい人なんでしょうね。こんな人、そうそういないですよね。グリュが困ったときにはいつも助けてくれました。お金での援助も簡単にできることではありませんが、それ以上に精神的な支援の仕方は、友人である彼ならではの素晴らしさなのだと思います。グリュを真っ当な道へ戻すため諭す彼の言葉は、友情という言葉以上の価値があったと思います。

 

*若さゆえ、なのか*

グリュとマノンの破滅は、二人が若かったから起きてしまったことなのでしょうか。マノンの経歴はわかりませんが、少なくともグリュは彼自身の口から、彼女に出会うまで女性に興味もなかったと言っています。確かにそう考えると、若いから・世間を知らないからという理由も納得しそうなのですが、少しそうだと思いたくない自分もいます。 

マノンのこの奔放さは年齢というよりきっと彼女の性格からくるもので、もう少し大人になっても変わらないのでは?と思ったりします。一方グリュは年齢を重ねていけばもう少し分別ある人になったかなとも思います。ただ初恋がコレって凄まじいですよね……。

 

*この本からの学び*

この本が教えてくれる大切なことは、「どこかでは冷静さを持っていて」ということでしょうか。何だか言葉に出したら陳腐になってしまいました。グリュにだって冷静になるチャンスはいくつもあったはずなのに、彼にはそれができなかった。それが「恋」なのだと言われればそこまでなのですが、現代に生きる私たちは、こうしてこの物語が後世まで残っていることに感謝しなければいけないのかもしれません。恐ろしいほどの恋に落ちる可能性は、きっと誰にだってあるのだから。